●『古城の風景』~宮城谷昌光さんと原田維夫による珠玉の歴史紀行 - 板に魂を吹き込む版画家、原田維夫公式WEBサイト

『古城の風景』

 ~宮城谷昌光さんと原田維夫による珠玉の歴史紀行

『古城の風景Ⅲ』文庫版/新潮社  装丁画はもちろん原田です。
『古城の風景Ⅲ』文庫版/新潮社  装丁画はもちろん原田です。

「歴史の楽しみは古城にあり!」・・・2000年代前半から足かけ六年をかけて、宮城谷昌光さんと出版社のTさん、Hさん、そして原田維夫が古城・城址をたずね歩いた歴史紀行シリーズです。

 

著者はご存じ、第105回直木賞受賞作家で、原田が長年にわたりお仕事をご一緒させていただいている宮城谷昌光(みやぎだにまさみつ)さん。

 

全巻、さまざまな場面で原田が登場し、古城がかもし出す歴史の風景に一喜一憂する原田のすがたを、宮城谷さんがあたたかい目で描写してくださっています。

 

・・・もちろん、全巻、全編にわたって原田が挿絵を担当させてもらっています!

 

 

 原田の登場シーン、・・・たとえばこんな感じです↓↓↓

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●『古城の風景 第一巻』~新城城~より


-------私とTさんは、新城(しんしろ)城址をみるのは、これで二回目となる。いまの新城小学校の運動場に城があったと思えばよいが、遺構はわずかしかない。

  しかしここにくる楽しさは、この小学校がなつかしい雰囲気をもっていることで、運動場を横切ってゆきながら、

 

---良い小学校だなあ。

 

 と、つくづくおもう。歩いていた原田維夫さんが喬木(きょうぼく)をみあげて、

 

「これ、栴檀(せんだん)の木ですよ」

 

  と、突然いったので、私ははじめて栴檀の木をみたような気がした。その木は、夕陽があたっているせいか、幹が紫色にみえた。薬用喬木といってもよいし、香木といってもよい。

  前回きたときは気づかなかった。風景はおなじでも、それをとらえる意識の目がちがえば、消えるものもあれば現れる物もある。歴史のなかの風景もおなじである。

 

  原田さんは、その木ひとつで、この小学校の質をとらえたにちがいない。前回の私は運動場とそのはるか上の天空のひろやかさ、それに校舎のたたずまいの良さなどに感動したのであるが、 原田さんの眼力にはおよばない-------

 

 

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 ●『古城の風景 第五巻』~小山城~より

 

-------なにしろ肝心な掛川城に原田さんを案内していないので、それを果たして、今春(いや、今夏といったほうがよいか)の旅をしめくくりたい。それゆえ、ふたたび遠州へゆかねばならない。

 

  原田さんはつねに楽しげであり、それをみると、同行者としては気がかろやかになる。 

  それにしても原田さんは若々しい。永遠の青年といってよい。私が無名の雑誌記者であった三十数年前に、原田さんはすでに一流の挿絵画家(版画家)であった。まさか原田さんと組んで仕事ができるとはおもわなかった-------

 

 

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 ●『古城の風景 第四巻』~朝日山城~より

 

-------朝日山城があった山を遠望した。

 

 風はなく、静かに暮れてきている。山裾を車でまわってもらい、大手口のほうへきた。丸い月が東の空に昇っている。五時十分前であった。人家が遠くに見える。

 

「朝日稲荷神社」

その石碑をみた原田維夫さんが、

「銀座にある神社と同じだ」

 

  と、声を発した。松屋デパートの裏、王子ホールの近くに、同じ名の神社があるらしい。私は年に二回ほどクラシック音楽のコンサートを聴きにゆくが、室内楽を王子ホールで聴くことが多い。

  が、神社の存在に意識の目をむけたことはなく、まして、神社名は知らない。音楽一家に育った原田さんは、さすがにコンサート・ホールの周辺については詳しい-------

 

        ◇        ◇        ◇

 

 ・・・軽快なテンポでつづられる宮城谷昌光さんの解説・歴史描写と、原田の渾身の作品を全巻にわたってお楽しみいただける『古城の風景』シリーズ(全7巻)をぜひご覧ください。

 

『古城の風景1~7』 宮城谷昌光 著  原田維夫 装画・本文版画  新潮社 2004~2010年 

『古城の風景』 ミニギャラリー 

※『古城の風景』に掲載されている作品の一部を販売しております。詳しくは「原田工房/作品販売のページ」をご覧くださいませ。

 

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